017 沼の底に2人目のお客様がいらっしゃいました

Beatrix [Bix] FIFEさん

簡単なご紹介

Podcast「ギャラリー沼の底」アイキャッチになっている絵を描かれた方です。

0歳~7歳半:イタリア在住(イタリア語)
小学校から大学:フランス在住(フランス語)
お父様:生まれ育ちはイタリア
お母様:イギリス育ちのノルウェー人(ノルウェー語)
お祖父様・お祖母様:イギリス人(英語)
1991年来日(日本語)

Bixさんの生い立ちについては↓↓こちらのコラム↓↓をご覧ください。
https://fugensha.jp/columns/category/the-land-jp/

 

家に入るためのドア

オセアン:Bixさんは5か国語を話し、絵を描き音楽を奏で非常に多才なのですが、
きっと【言葉・絵・音楽】はバラバラな物ではないですよね?
ご自身の中では、どのような関係性があるのでしょうか?

Bix:言葉とイメージ(絵)と音は全部関係しています。
言葉の中でもイメージする事はありますし音もよく使います。
コミュニケーションする時の表現を絵にする事も出来るし、音楽にも出来ます。
音楽のリズムやメロディーも、絵の中では音ではなく、イメージでも出来ます。
私にとっては同じものです。
同じ家に入る為のドアが3つ4つ5つくらいある。

アイキャッチの絵のタイトルは「SAYS NON」。

絵を描いている時に時々言葉が出てきます。英語とかフランス語とか。
今回この絵は、「そうじゃない」というフランス語が出てきました。
絵の世界に入る時に言葉がだんだん消えるけど、また戻って来る。そういうのもあります。
言葉というと音、鳥の声とか。
この絵を描いていた時に、絵の中で水が流れている音がしました。

 

鍵穴から覗く

もう一つは、家にはドアがあります。
窓もあって。
ドアを開ければ世界(自分の庭)が見えるけど、アイキャッチの絵の中ではドアの「鍵穴」から中を見ています。
外から中を見ている。海が見えるとか。そういうイメージはしていました。

オセアン:部屋の外から中ですか?部屋の中から外を見ているんじゃなくて?

Bix:解釈は自由です。個人的に描いた時には外から中を見ていました。
絵を見る時はどちらでもいいです。
個人的に決める事ですから。
お二人はこの絵を見て「中から外」のイメージでしたか?

ミツキ:私はこの絵を最初に見た時「人の頭と胴体」だと思っていました。
人の頭の所にいろんな色があるので、様々なイメージを声や音で表現しているのかな。と勝手に想像していました。

オセアン:私もサングラスをかけている人の顔に見えました。

Bix:実は人物の形のイメージもありました。人物っぽい鍵穴。肩とか頭とか。

 

三重苦の世界から外/内を見る

オセアン:この絵と出会ったのは昨年(2021年)のグループ展でした。
浅草にあるギャラリーアビアントのSNSに作品写真を載せる為、私は撮った画像をパソコンで見ていました。
作業をする時は音楽を聴くのですが、その時たまたまクラシック音楽を聴きながら写真を見ていたんです。
Bixさんの作品の写真【目から入って来る情報】と、【耳から入って来る音楽の情報】が「バチッ」っと火花が散ったみたいに一致した瞬間がありまして、まるで雷が落ちたような衝撃が私の中にありました。
「これは何だろう?!」と思った時に、ヘレン・ケラーが思い浮かびました。

両目が見えない、両耳が聞こえない。その結果喋る事もできない三重苦を生きた女性の事をご存知ですか?
ヘレン・ケラーは1歳半の時に病気によってその状態になりました。
暗い世界に閉じ込められていたのです。

サリバン先生という方が教師として派遣されて来るのですが、有名なエピソードがあります。
ある日サリバン先生はヘレンを庭に連れ出し、片方の手のひらに井戸の水をバシャバシャかけ、もう反対の手のひらに「WATER」と綴りました。
その左手の情報と右手の情報が「バチッ」と一致した瞬間があったのです。

ヘレンはその時「全ての物には名前がある」と気が付いたのですが、私が受けた衝撃はそれに似ていました。
耳から入って来る情報と目から入って来る情報は、普段はバラバラなのだ、と気が付いたのです。

 

幸せな人生の源

Bix:情報は社会がバラバラにしたと思います。
昔のヨーロッパ社会は、音・イメージ・言葉・サイエンスは関係していました。
ヘレン・ケラーの事は凄く想像できます。水のタッチと言葉のタッチ。
何年か前にパリで、真っ暗なギャラリーの中で作品を触る、という展覧会に行った事があります。
目の見えない人の感じになります。最初に触って「何だろう?これ?」と想像します。
頭の中にイメージが出てきます。
電気が点いて目で見た時、それもショックになりました。「えー!こんな彫刻だったの?」って。
触っている時とは違うイメージが出てきました。

言葉と水が1つのイメージも面白いし、触っただけのイメージも面白い。

オセアン:ヘレンは目が見えないし耳も聞こえないけど、イメージを内面に沢山もっていました。
彼女は「私の人生は幸せだった」と言うんですね。自伝を読みながらそれがとても印象的でした。

 

音・言葉・音楽、波動・振動

オセアン:ヘレンとサリバン先生を繋いだ方がいて、その人物も非常に有名なんです。
グラハム・ベル博士と言う方をご存知ですか?

Bix:ベルはテレフォンの?私のお祖父さんはベル・カンパニーで仕事をしていました。すごい偶然!

オセアン:ベル博士の兄弟やお父さん、お祖父さんの専門も「言葉」だったそうです。
ろうあ者の方の研究をしていました。言葉を記号にして伝えやすくするとか。
グラハム・ベル博士の専門も音・言葉・音楽という所がキーワードになってくるんですね。

もっとお話しをしたい所なのですが、そろそろ閉店の時間が…

ミツキ:あ、ほんとだ!あっという間に時間が経っていました。

オセアン:そろそろ閉店のお時間なので今日のお話しはこれでおしまいにしたいと思います。
でもBixさん、また次回もお越しいただいてもよろしいですか?

Bix:はい

018話に続く

ギャラリー沼の底 Océane

ギャラリー沼の底 Océane

ハラオチしながら世界をみる

1974年東京生まれ
ギャラリーアビアント アシスタント
家事代行piu-c(ピウシー)代表

祖父、伯父、父が舞台美術家であるが、自身は元バスケットボール選手。
物の見方と認識が専門。

選手引退後小学校教師を目指すが、情報量の多さと教育界の厳しい現実を知り断念。
情報を外側に求めると「知らない領域」が無限に広がってしまう事に気がつき、既に知っている情報をより深化させる道を模索するようになる。
長らくメンタルの引きこもり状態が続いたが、日本に住む2人の外国人との出会いと、コロナ禍による交流の断絶が契機となり、抽象的かつ感覚的なイメージを少しずつ言語化し発信するようになる。
情報分断の原因でありイメージ界最大の不一致でもある「有るイメージ」と「無いイメージ」を繋ぎ、イメージ世界のバリアフリーを目指している。

関連キーワード

関連記事

RELATED POST

この記事へのコメントはありません。

PAGE TOP
MENU
お問合せ

(月 - 金 9:00 - 18:00)カスタマーサポート