018 抽象画という総合芸術について

音、言葉、リズム、動き

ゲスト:Beatrix[Bix] FIFEさん

オセアン:ミツキさん、前回Bixさんとのお話し、いかがでしたか?

ミツキ:音・言葉・イメージ、もっといろいろ聞きたい感じでした。

オセアン:ミツキさんのキーワードにも「音」が含まれている感じですよね?

ミツキ:あります。最近特にそれを感じます。
日本語は音で成り立っていて、今の流行語もありますが昔からある言葉とかは、響きが違うんですよね。
日本人の思想とか思考とか混ぜ込まれているのがあるらしいんです。今勉強中なんですが。
「あいうえお」母音1つ1つ「あ」とか「い」にも意味が込められている。
「響き」を日本人はとても大切にしている。
昔の言葉を音読していると心地よい感じが奥の方から感じられる事があります。

Bixさんは世界各国の言葉をどんな風に捉えているのか?気になります。
あと抽象画ワークショップもされているとお聞きしたので、それも気になります。

オセアン:Bixさんから日本語を見た時、どういう風に見えますか?色とか絵とかリズムとか、日本語はどういう印象がありますか?

Bix:日本語は母音「あいうえお」がありますが、これはラテン語にもある。どこにでもあります。
母音は最初赤ちゃんが覚える言葉です。
ビックリしたのは初めて日本語を聞いた時に母音と子音が口を閉める。ハッキリとバランスを取ってリズム的に使っている。
それはとてもビックリしました。
ヨーロッパ人から見ると日本語は特別にきれいなところがあって、口を開けたり閉めたりのリズムがあります。
呼吸の時はフランス語やイタリア語よりも短くリズミック。例えるなら太鼓みたい。

 

コンパクトでリズミック

私はフルートを吹くのですが、尺八の音とか深くて長く吹く事も面白い。
日本の音楽は「間」が空きます。言葉の中にも沈黙、喋らない時が多い。
それもビックリしました。

翻訳する時、例えば英語やフランス語は1ページ書くとすると、日本語は半ページくらい。
半ページまでもいかない。日本語にすると。それは有名です。
日本語はコンパクト。コンパクトでリズミック。

ミツキ:話し方レッスンをする時に「間を大切にしてください」って言うんですけど、「間」は日本の特徴だったな、と思いました。

Bix:間には長い間と短い間があります。
例えばフランスで長い間にしたら、良い印象になりません。賛成していない人とか。

Bix:中国から漢字が入って来る前から、日本には独自の音がありました。
日本は島だから、太平洋の他の島々からの影響はあったのでしょうか?ポリネシアとか。ハワイとか?

ミツキ:研究者ではないので本当の所はわかりませんが、日本のすぐそばの朝鮮半島とか中国とか、そこからの影響は濃く受けていると聞いたことがあります。だけど北の方はロシアとか。日本の中でも言語の文化は全く違う、とも聞きます。

Bix:混ぜているみたいな感じ?

ミツキ:そうだと思います。

Bix:日本は混ぜるのがすごく上手い。料理とか。

 

コミュニケーション・ツールとしての絵

Bix:日本人はヨーロッパ人と比べるとあまり喋らない。向こうは絵を描くときによく喋ります。
だから私のワークショップでも喋る事にしたんです。
絵を見てどういう印象を持つか?カナール(Canal:運河・水路?)みたい。
絵と人間の間にある道。家に入る時のドア。言葉はドアじゃないですか。
人の心を見るためにドアを開けて、言葉を伝える。
絵を見てちょっと言葉を使うとか。

オセアン:移民の多いヨーロッパでは絵を使いそれぞれの背景を絵で見させて伝えあう、というエピソードを思い出しました。

Bix:昔のヨーロッパ100年~150年くらい前までは、今の日本のように絵は職人が描く物でした。
現代社会において、絵は一つのコミュニケーション方法になっています。気持ちの発散にもなります。
移民の子どもは絵を描くことで気持ちを出す事ができます。
相手もその子の気持ちがもっと良くわかります。
後からその絵に言葉を付けていきます。先に絵があると言葉を付けやすくなります。
だから言葉と絵と音は関係しています。

もう一つ、ヨーロッパにおける現代アートは、子どもから大人まで、もっと自由に描かせます。
具象とか「このスタイルで」という事ではなくて。

オセアン:テクニックとかスタイルではなくて?

Bix:テクニックはありますけど、テクニックは光とか形とか、この鉛筆でとか。
でも個人主義だから「自分」が先。テクニックはその後で磨きます。

 

動きを絵にする

オセアン:Bixさんは抽象画ワークショップをオンライン/オフライン両方で開催なさっています。
私はギャラリーアビアントでのオフラインに参加させていただいているのですが、
個人的にはオフライン(リアル開催)で良かったな、と思う事がありました。

先日「動き」をテーマにした時はすごく面白かった。

Bix先生が目の前でゆっくりしたダンスを踊られまして、その動きを描いてください、というワークショップだった。
私はどこに焦点を当てて動きをトレースしたらよいのかアイディアが浮かばないまま、
とりあえずBix先生の右手の動きを徹底的にトレースしてみました。
手元を見なかったものですから最後グチャグチャになってしまって…

Bix:ワークショップは練習の場所です。自分の作品を作りたい人はあとで家で作る事ができます。
体の線を描いても良いし、空気の線を描いても良いし、ワークショップではいろんな可能性が出てきます。
オンラインでは表現を少し変えています。
例えば魚を想像して水の中でどう動いているか、を描いてもらったりします。
オンライン/オフライン同じテーマであっても、それぞれ別の練習ができます。

オセアン:そういえばBixさんはこの夏ヨーロッパに一時帰国なさっていましたよね?
日本に帰ってきてから「動き」をテーマになさったのは何か理由があるのですか?

Bix:日本は動きをあまりしない文化。それは仏教も関係しているのかも知れませんが。
ヨーロッパに行くとみんなよく動きます。早く歩いたり喋ったりジェスチャーしたり。
そういう事は絵の中にも現れてきます。
日本の抽象画と比べると、ヨーロッパの抽象画には動きがありました。
今回の帰国で、それがハッキリ見えました。
もしかするとコロナで動きが止まっていた事も関係したのかも知れません。

 

「動き」は「気持ち」と関係している

オセアン:Bix先生の抽象画ワークショップを受けるようになって「絵は総合芸術」という事に初めて気が付きました。
絵は基本的に止まって見えるのだけど、その中には空間があり光がありリズムがあり音楽があり動きがある。

ヘレン・ケラーの話しに戻るんですが、目に見える物には名前がある、という所にヘレンは気が付きます。
その次の段階でサリバン先生は【目に見えない物、手で触れない事にも名前が付いている】という事を教えようとしていく。
「愛」「心」というような抽象的な事柄を教えようとしますが、ヘレンはなかなか分からない。

Bix先生は抽象画を教えておられる訳なのですが、目に見えない抽象的な事柄を伝えるのは難しくて、だけどとても大切なものだと思うんです。

Bix:動きと目の見えない人の気持ち、英語でMovingという言葉がありますフランス語でEmouvant。
気持ちは体の中で動いています。
「動き」は「気持ち」と関係しています。
焦っている時、緊張している時、全部動きが関係していませんか?どう思いますか?

ミツキ:していますね。

オセアン:気持ちは絵にできる、という事?

Bix:はい。気持ちは絵にできます。
日本語で「気」「持ち」はあまり動きが入っていない言葉に思えますが、動きはありますか?
「気」のエネルギーは動きですか?

オセアン:「気」は流れですよね。

Bix:「気」は動いていますか?言葉として。「感じる」もありますよね。

ミツキ:え?「気持ち」という言葉からですよね?

Bix:止まっていないですよね?
抽象画の中で動きも大事ですけど、逆に動かない事も大事。
現代アートの抽象画のテクニックはいろいろな面を見ます。少し哲学っぽい。考える事。左脳と右脳を両方使う事。
合理的だけじゃなくて、気持ちや想像する事も同時にする。
抽象画と現代アートはその辺のテクニックなんです。

オセアン:まだまだ聞き足りないのですが、残念ながら閉店の時間が来てしまいました。。。
また是非遊びに来てください。

ミツキ:また是非お酒を吞みながら続きを聞かせてください。

Bix:ありがとうございました。See you again!

ギャラリー沼の底 Océane

ギャラリー沼の底 Océane

ハラオチしながら世界をみる

1974年東京生まれ
ギャラリーアビアント アシスタント
家事代行piu-c(ピウシー)代表

祖父、伯父、父が舞台美術家であるが、自身は元バスケットボール選手。
物の見方と認識が専門。

選手引退後小学校教師を目指すが、情報量の多さと教育界の厳しい現実を知り断念。
情報を外側に求めると「知らない領域」が無限に広がってしまう事に気がつき、既に知っている情報をより深化させる道を模索するようになる。
長らくメンタルの引きこもり状態が続いたが、日本に住む2人の外国人との出会いと、コロナ禍による交流の断絶が契機となり、抽象的かつ感覚的なイメージを少しずつ言語化し発信するようになる。
情報分断の原因でありイメージ界最大の不一致でもある「有るイメージ」と「無いイメージ」を繋ぎ、イメージ世界のバリアフリーを目指している。

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